モデルプロセス導入改善とBPM導入方法について

 まず、最初にBPM=BPMSではありません。またBPM=BPMNでもありません。ここは「BPMとは」の動画を観ていただければと思います。
BPMを通常のシステム開発手順で進めると失敗をする、またはBPMSを使っていてもBPMでは無くなることが多いと思われます。通常のシステム開発手順というのは「アジャイル開発」も含めてです。「BPMS導入=アジャイル開発」という認識も捨てる必要があります。これらはBPMの改善ステップ6だけの話であり、肝心のプロセス改善の手順1~5が置き去りになっているということです。
 BPM導入は業務改善ができる人材育成を含めて行うことです。人材が育成されていない状態で、風呂敷だけ広げると、それぞれバラバラの考えで進めることで「混乱」が発生します。ここでの人材とは、実務者、情報システム担当者、管理職者、外部システム開発者、ITコンサルタント、経営コンサルタントなどです。異種格闘技戦ではなく、まず同じ土俵に乗ることです。導入の基本的な手順は以下の動画の通りですが、それぞれの企業・組織によって体制、役割などは異なることになるでしょう。

目次
1.なぜモデルプロセス導入が必要か
2.業務改善のイメージ
3.「短期の視点」との決別
4.まとめ

1. なぜモデルプロセス導入が必要か

 人材育成の第一歩がモデルプロセス導入になります。この導入を実施することでBPMを理解でき同じ土俵に乗ることできます。抽象論では、ステップ1~5で何が実現できるかを理解することが難しいからです。モデルプロセス導入による改善は、PoC(Proof of Concept)とは異なるということは以前のコラムにも書いたと思います。今、BPM導入をしている(した)つもりの会社の多くの失敗は、As-Isフローを描いて自動化できる部分を探し、BPMSを使用してその自動化が実現できるかどうかを検証している (した)と思います。(これがPoCだと思います )。To-Beフローは存在せず、 部分的に自動化が実現できるとTo-Beプロセスになる(なった)と思っているようです。この考え方でプロジェクトを開始してしまうとBPMでは無くなります。これはプロセス改善ではなく単なる作業の自動化です。従来のシステム開発の考え方で進めることで陥る問題です。人の業務を含めた改善を行うことがBPMですので本質が異なります。(ここは過去のコラム【「自動化」という言葉の罠、BPMは標準化から】をお読みください。)
 ここまで抽象的な事柄を書いていますが、この話でBPMを理解できた人は、ほとんどいないと思います。でも何となくでも理解でき、興味を持った人もいると思います。そのあなたが、先頭に立ってモデルプロセスの導入を進め、BPMの改善ステップを踏んで、業務改善、プロセス改善を実感する体験を、関係者を巻き込んで行うのが本当の第一歩です。モデルプロセス導入支援は99万円以下で実施しています。

2.業務改善のイメージ

ホワイトカラー業務(事務、営業、購買、開発・・)の業務改善のイメージは 

おおよそ65歳以上の方は「業務フローや業務マニュアルを書いて業務を標準化することだ」「しかし、これが維持できないのが永遠の課題だ。」と言います。この言葉の意味は以下のよう要約できます。
・業務フローを描くと、現状業務の可視化ができ議論をすることによって課題解決、業務改善ができる。(この成功体験の感覚がある。)
・しかし、業務改善ができるのは業務フローを描いたときだけだった。製造現場の作業改善のようにPDCAサイクルが回らない。
ということだと思います。

一方、40歳代以下の人は、業務改善は「誰かがやってくれること。」「実務者がやることではない。」と考えているように思います。これも以下のように要約できます。
・業務改善は経営者が情報システム部門に指示をして、多額の費用をかけてシステムを構築して実施する。
・システムの失敗は、自分達(実務者、情報システム部門)の失敗ではない。

BPMは、そのどちらでもなく、その両方の課題を解決する手法になります。どちらかの方法でBPMを導入すると、過去の失敗と同じことが繰り返されることになります。
・BPMN図を描くだけではなく、BPMSを使ってPDCAサイクルが回る考慮、手段が大切である。(自動化開発においても)
・他人ごとにはならず、全員が当事者であること。それぞれに役割がある。
ということです。
すなわちBPMは情報システム部門が担当するような狭い領域ではないことを意味します。

3. 「短期の視点」との決別

 従来のシステムに対する考え方の経営者は、導入すると改善効果があると考え費用対効果を求めます。自分の任期中に投資に対する効果が出ないと自分の評価に関わるからでしょう。(自分の任期が終わったら、その後、会社がどうなろうと関係ないという考え方の経営者も増えたと感じます。)残念なのは「人員削減」=「コストダウン」などを目標にしている場合です。情報システム部門の担当者がシステムを導入するための詭弁として言っているのならまだしも、本気で経営者が言っている場合は・・・。
 自分の仕事が奪われるかもしれないという目標のために、誰が協力的になるのでしょうか。 「実務者が協力しない」⇒「システム導入を失敗する」⇒「失敗を誰かの責任(外部)にする」ずっと、こんなことが繰り返されているように思います。この悪循環をBPMで終わりにする必要があります。そのためには短期の視点を捨てる勇気と短期の結果を受け止める度量が必要です。私が若いときは、少なからずそういった経営者がいました。

4.まとめ

 私を含めたBPMコンソーシアムの理事3名で話をしたとき、前の世代(バブル前)の経営者の良い影響を受けたのは、我々が最後の世代ではないか。というような話題になりました。我々はレールの上を走るのでは無く、レールを作っていく仕事の楽しさを知っている。大きな命題を与えられ、それをどのように自分の会社の中で実現するかという経験を持っています。BPMも、このページの動画で示したように大きな導入メソッドがあるものの、これを自分の会社の中で、どのように活用し導入するかを考え抜き実施することこそが大切なことです。現在、ご支援をしている会社のトップも我々と同世代でありキックオフにて「BPMを実施するのは、業務改善そのものも大切であるが人材育成が目的だ」と言われました。「やってみたい」人を選びスタートし活発な議論をされています。何か、とても懐かしいものを感じました。
 残念ながら90年代、バブル崩壊後は短期の視点での評価が強くなり、経営環境が悪くなると経営者は「リストラ」を繰り返しました。従業員は切られないように首を縮めて生きている亀のようになってしまったように思います。(それによって精神的な病を持つ方が増えたとも感じます。)
 「空気を読む」「忖度する」ことが評価される社会や組織にはBPMは必要ないでしょう。より良く業務を変えるために、空気など読まずに自由闊達な議論をして、合理的に適材適所で働ける環境を作っていくことこそがBPMの大切な役割だと思います。そしてBPMを通じて我々が最後の世代にならないようにしなければならないと強く感じます。

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