DXを叫ぶ、しかし導入のための説得が難しいBPM
前回のコラム「モデルプロセス導入改善とBPM導入方法について」では「従来のシステム開発の考え方から頭を切り替える。」ということから、BPMを理解するためには「モデルプロセス導入」をまずやってみる、ということを説明しました。BPMは情報システム部門が外部ベンダーやコンサルタントに依頼することで導入することはできません。我々も含めて外部は支援でしかありません。
「『空気を読む』『忖度する』ことが評価される社会や組織にはBPMは必要ないでしょう。より良く業務を変えるために、空気など読まずに自由闊達な議論をして、合理的に適材適所で働ける環境を作っていくことこそがBPMの大切な役割だと思います。」とまとめました。
『BPMはBPMNとBPMSを使った「業務改善・改革」のマネジメント手法』です。という話は、それぞれの「~とは」のページを読んで(動画を観て)いただければとは思います(青字を押してください)。BPMの導入の説得が難しいのは「誰が予算を持っているのか」と「費用対効果」という壁に当たります。
「適材適所で働ける環境」とは何か、ということからBPM導入への説得方法を書いてみたいと思います。
目次
1.適材適所とは
2.BPMにおける適材適所の実現方法
3.誰が予算をもつべきか
4.まとめ
1. 適材適所とは
適材適所とは、「適している人材が適している場所」で働くということだと思います。経営スキルの高い人は、経営層や事業部長というような場所で新しいビジネスを作り上げる、新しい顧客を獲得する、効率的なビジネスを行うための判断をする。などという業務をするでしょう。技術スキルが高い人は高度な設計業務を担当し新しい技術開発でビジネスを作り上げるでしょう。しかしながら高スキルの人にも、本人が実施する必要のない事務業務が含まれています。
例えば出張旅費、経費精算などです。デジタル化されていても申請様式に移動手段や金額などを入力して申請しなくてはならないでしょう。ただ、このような業務を他人に任せるにも、やり方を知っている人に指示しないとできないでしょう。
BPMでは領収書をスマホで写真を取ってメールをすることがトリガーとなって、アシスタントが書類作成し、本人は作成された書類を確認するだけということで時間が短縮されることができるでしょう。この考え方は決して新しいことではなく、忙しい営業担当者に事務アシスタント付くというのと同じことです 。異なるのはBPMを導入すれば業務指示や受渡が自動化され、特定のアシスタントである必要はなく、アシスタントが近くにいる必要もありません。リモート業務やBPOが可能ということになります。顧客への見積書作成・提出なども、営業担当者が入力しなくてはならない部分は限られていると思いますので同様の改善ができます。また顧客ごとに特殊事情がある場合など特定顧客用の見積作成プロセスも容易に作成することができます。
単純な例でのお話しでしたが、まずは誰が何をするのかをBPMN図で分担を明確に記述しBPMSに実装して実行することです。これができていないのに、以下のTo-Beフローの朱書したテキスト注釈で書いたような自動化に走ってはいないでしょうか。そして自動化できるまでは改善しない。ということになっていないでしょうか。アシスタントの人数を減らしても大したコストダウンにはなりません。高スキルの人から標準化できる業務を引きはがすことです。アシスタントの業務そのものの業務が増えますので、アシスタントの業務も改善する必要があります。
As-Isフロー
To-Beフロー
2.BPMNとBPMSを使った業務改善のイメージ
前述のようにBPMNで記述しても、BPMSがないと改善は実現しません。しかし自動化は必須ではありません。この例では単純な業務なので他のシステムでも実現することもできると考えるでしょう。しかしもっと複雑なプロセスであった場合、業務フローの読み取り、聞き取り、そのシステムでどのように実現するかという変換業務(設計)を行うという手間がかかるでしょう。しかしBPMSであれば、検討したBPMN図をそのまま設計図として実装することができます。読み取り、聞き取りも変換業務(設計)も最小限に抑えられるでしょう。これらのことを書いていても恐らくBPMは理解できないです。本当はモデルプロセスとして1プロセスを実践的に導入することをお勧めしていますが(モデルプロセス導入支援)、「BPMN Q&Aサイト」には、BPMNとBPMSで実施する適材適所のヒントとなる動画を載せてあります。是非見ていただければと思います。(特定のBPMSの宣伝とならないように一般公開はしていません。無料で登録が可能です。)
3. 誰が予算を持つべきか
BPMはBPMSを使うためシステム導入と勘違いされ情報システム部門が予算化してしまう場合、正しいBPM導入が難しくなります。「業務改善」ではなく「自動化」という視点からBPMSを使ったシステム開発になってしまう可能性が高いからです。「現状分析」をして「要件定義」をし「設計書を書き」・・ということを始めてしまうと、気の遠くなるような作業が始まります。過去、BPMは何度もそういった失敗をしており、いつまで経っても現状分析が終わらないか、無理やり期限までにシステムを作り上げることで、容易にPDCAサイクルが回らない業務システムができるということに陥ります。実務を管理する部門が予算を持ち、実務者と情報システム部門と共に業務改善を行うことです。BPMの導入も適材適所であり、実務を知っているのは実務者、システム開発を知っているのは情報システム担当者という役割分担を明確にすることです。決して実務を知らないシステム担当者がすべてを行うということをしてはならないです。それは実務者、情報システム担当者、システム開発者、管理職者、経営者・・誰にとっても不幸な結果を生むことになるでしょう。(ただ、情報システム担当のあなたがシステムも業務も理解でき、実務者を含めて業務改善のリーダーシップを発揮できるのであれば、私の言っていることは無視してください。)
4.まとめ
高スキルの人の工数、時間単価がアシスタントの工数、時間単価に変わることが、BPM導入における説得しやすい効果だと思います。しかし、それは一朝一夕には達成はできません。
DXのDはデジタルですが「デジタル化」という言葉は人によって捉え方が異なっていると思います。封書で紙を郵送しない、そろばんを使って計算をしないということでは、eメールもExcelもデジタル化です。またペーパーレスやそれに伴い捺印を無くすこともデジタル化でしょう。しかし、紙が紙で無くなるというレベルの改善は、バラバラのパーツ(ツール)レベルでは実現していて当たり前だと思います。もしできていないとすると、それは経営者、管理職者や政治家、官僚、公務員の職務怠慢でしょう。
これから踏み込む業務改善は、今までシステムが担ってこなかった業務を「デジタル化」し「見える化」することです。それは誰かに頼むとできあがるわけではなく、AIが勝手にやってくれることではありません。自らの手で何年もかけて変化に対応できる揺るぎない「しくみ」を構築する必要があります。我々は、そのお手伝いをすることはできますが、構築することはできません。なぜなら皆さんが、それぞれ日々実施し、都度、工夫して変化対応をしている業務を知らないからです。構築されたシステムに対して「使いにくい」と実務者が文句を言っているような時代は終わるということです。そう言っているあなたが、自ら使いやすく修正し続けることで業務改善は実現することになります。その「しくみ」「システム」がBPMです。
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