BPM「業務の受渡の自動化」とは

 前回のコラムの予告通り、今回は「業務の受渡の自動化」に関して書きたいと思います。BPMNとBPMSの繋がりを経験した人は「業務の受渡の自動化」という言葉を理解できます。しかし経験していない人にとっては難解だと言われます。
 IT系の人は「業務の受渡の自動化」を「承認ワークフローシステムの承認決裁と同じ」と誤解してしまいます。これも経験した人には、その違いがわかりますが経験をしていない人は表面的に捉えてしまいます。「何かと同じ」「このカテゴリーと同じ」と分類したがるのは世の常です。そして、その人が決めたカテゴリーの中に押し込めて理解しようとします。しかしながら、それがBPMに対しての誤解の始まりとなります。
 「業務の受渡の自動化」を意識している我々は現状(As-Is)のBPMN図を描くときからBPMSに実装されることを前提に、ご支援をします。As-Isフローが、ほぼそのままBPMSに実装されることもあるからです。いざ実装しようとしたときに描き直しにならないようにするためです。(システム開発などで「作業の自動化」をする部分を探すためにBPMNで業務フローを描くことを目的にしている場合、我々の描き方は理解できないでしょう。)
 「業務の受渡の自動化」とは何かを説明した後に、なぜハンドオフを中心にBPMN図を描くか述べてみたいと思います。

1.業務の受渡の自動化とは

  BPMを説明するためのマンガを作成しました。このマンガの一部を使ってご説明します。
 BPMS上で業務を行うとBPMN図に沿って業務が受け渡されます。ここだけだと承認決裁ワークフローとの違いがわかりにくいと思いますが
BPMSではグループの中で手の空いている人が「自ら引き受けて業務を行う」ということができます。下のマンガでは、BPMN図のアルバイトのレーンにはCさんとDさんが割当たっているのですが、CさんにもDさんにも同じタスクが表示されており、手の空いている人がそれを引き受けて行う。ということになっています。マンガではDさんが「お金・お礼の準備」タスクを引き受けるとCさんのグループタスクからは消えていることを表しています。
(BPMSを承認ワークフローシステムと同じだと誤解した人は、これを代理決裁者機能と同じだと考えてしまいます。)

2.承認決裁システムとの違い

 BPMN図に沿って業務が受け渡されるということは、業務の途中の判断、条件によってゲートウェイを介してルートが変わっていきます。
以下の修理プロセスにおいても、タスクでの人の判断によってルートが変わっていきます。承認ワークフローではあらかじめ決まったルートでのフローとなりますので以下のような処理はできないと思います。さらに並列ゲートウェイ、包含ゲートウェイなどが登場するとさらに不可能だと思います。
(承認決裁システムでも「カスタマイズすればできる」と言われるIT技術者もいるかと思いますが、BPMSではBPMNを描くことで容易に実現ができます。容易に修正も可能です。承認決裁システムで「開発」することで同じことが実現できたとしてもとBPMSと同じビジネス・アジリティではないと思います。)

3.ハンドオフでタスクの粒度を記述

 「ハンドオフ」とは業務の受渡しであり、それを基準にタスクの粒度を決めるというものです。前述のように「業務の受渡の自動化」を意識している我々は現状(As-Is)のBPMN図を描くときからBPMSに実装されることを前提での記述をお勧めしています。To-BeでBPMN図の描き直しや、実装での描き直しにならないようにするためです。
 上記のプロセス図に下図のように黄色いユーザータスク「品質管理部門に依頼する」を記述したいという人がいます。BPMN仕様としては間違いではありません。
しかしながら、このままBPMSに実装したらどうなるのでしょうか。メンテ統括は「対応方法の決定」タスクの画面で保守契約が無いことを確認して、画面を閉じた瞬間にマイタスクの中に「品質管理部門に依頼する」タスクがすぐに現れます。本当にそれで良いのでしょうか。
 ブルース・シルバーは「シーケンスフローは業務の順番を示すだけでは無く『伝達』も意味している。」と言っているのは、下図の例で言うと「対応方法を決定」タスクの画面で保守契約が無いことがわかったら品質管理部門に対しての依頼文や依頼内容を、その画面内で書くことになる。ということを示唆していると言えるのではないでしょうか。

4.まとめ 

 前回のコラムにBPMN図を描く目的は、主に「業務を標準化して業務の受渡しを自動化する。」であることを書きました。
これをわかりやすく「業務改善の手法~BPM(ビジネスプロセス・マネジメント)とは~」というマンガにしました。合わせて「事務業務の改善手法にたどり着くまでの道のりBPM」もお読みください。マンガのダウンロードはここをクリックしてください。
 次回、コラムでは、以前(2022年12月)に「BPM「体制」「しくみ」の重要性:PMBOKの壁?」というコラムに関連して「BPMN図以外にBPMSを導入するときに必要な情報」ということを述べてみたいと思います。

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