BPMにはプロセスマイニングツールは不要
前々回に予告していた本件を今回は書いてみたいと思います。セミナーなどで「BPMにはプロセスマイニングツールが必要と言われているのですが、本当に必要ですか?」という質問をされることがあります。BPMをBPMN図を描いて「可視化」することだと誤解している人の質問だと思います。一度でもBPMSを使ったことがある人であれば、このような質問はしないでしょう。世の中には正しいBPMN図を描くこともできない(描く意味もわかっていない)人や、BPMSを使ったことも無い人がBPMを語っていることによって、そういった誤解が生まれるのだと思います。
本件についてChatGPTとのやりとりを引用する形で説明をしたいと思います。
目次
1.プロセスマイニングツールができること、なぜBPMと関連づけて説明されるか
2.BPMを実施しないで、なぜプロセスマイニングツールに飛びつくのか
3.まとめ
1.プロセスマイニングツールができること、なぜBPMと関連づけて説明されるか
「プロセスマイニングツールとBPMに関して」の誤解のスタートは「BPMN図を描くことが可視化」であり、それがBPMだと思っているからでしょうか。(コラム「一般的な業務フローとBPMN図との違い」「BPMは手法でありフレームワークではない」参照。)そのことによって「BPMのライフサイクルの中にプロセスマイニングツールが必要」という誤った発信があるのだと思います。
BPMにおいてプロセス(タスク)マイニングツールが必要という根拠は「現状のシステムログ、PCのログから、おおよその業務プロセスと業務ルールが出力され、かつ課題発見ができる。」とされているからでしょう。システム内に埋没している業務知識を分析するキッカケになるということでしょうか。(コラム:BPM導入が「いつの間にか普通のシステム開発」になる原因参照)
ChatGPTに「プロセスマイニングツールとBPMの関係」について、いくつかの質問をすると、
まず
→BPMの定義に立ち返ると、
→BPM(Business Process Management)は、単なる「業務の見える化」ではなく、業務プロセスを構造化し、設計・実行・監視・改善のサイクルを回すためのマネジメントの枠組みであり、BPMSなどの実行基盤がなければ成立しないというのが、厳密なBPMの考え方です。
次に
→もしBPMSが正しく設計・運用されているのなら、プロセスマイニングツールは不要です。可視化、分析、改善のためのデータはBPMS内にすべて揃っている。このような状況なら、わざわざプロセスマイニングツールを外からかける必要はない。
「では、なぜBPMにおいてプロセスマイニングツールが必要だと説明されているのか?」と質問すると
→「BPMをやっていない状態」から「なんちゃってBPM的な見える化」へ向かうためのツール(原文そのままです)。
→ベンダーが統合して売っている。「プロセスマイニング」+「BPMモデリング」+「自動化」を一体化して提供。そのために「プロセスマイニング=BPMに必要」と誤解されやすい。
すなわち、BPMを導入する前に、ざっくりと会社のプロセスを洗い出し、ざっくりとした課題をみつける。というのが目的のようです。
そうするとBPMのライフサイクルの中には登場せず「1度だけしか使わないツールではないか。」とChatGPTに質問をすると
→ 完全に正しい。
→プロセスマイニングは、BPMNでTo-Beを設計する前に「As-Is(現状)」を把握するだけの一時的な道具であり、
BPMSを中核に据えて業務を設計・実行するようになれば、継続利用の価値は大幅に下がります。
→1度しか使われない問題はすでに実証されつつある。継続的に使っている企業はRPA連携用途などである(見えなくなるから)。
補足すると、現状が把握できるのは、基幹システム、PCを使っている業務に限る話であり人が判断、作業をするといった内容のデータはないためプロセスマイニングツールでは分析できない。「なんちゃってBPM的な見える化」と言っているのはそういったことかと思います。
2.BPMを実施しないで、なぜプロセスマイニングツールに飛びつくのか
ChatGPTに「ではなぜプロセスマイニングツールを導入する企業があるのか」という質問をすると
→「ツールがあれば業務が改善される」という幻想をもとに、ツールだけが先行導入される。しかし、プロセスマイニングはプロセスそのものを変える力を持っていない(設計も制御もできない)。
→現場で「BPM」と呼ばれているものの多くは業務フロー図を書いただけで改善していない。
→ツールがバラバラ、プロセスがシステムに実装されていない。
→定量データではなくヒアリングベースで課題を議論している。
という状態であり、厳密には 「BPMとは言えない」という現実があるからです。
ChatGPTは、さらに辛辣に
→プロセスマイニングをBPM代替手段と誤認する。「プロセスマイニングでAs-Isが見えたから、もうBPMできてるよね?」
このような発言が現場で出がちです。実際には以下のようなギャップが存在します。
本来のBPM | プロセスマイニングで得られるもの |
To-Beの設計 | ❌(ない) |
プロセスの実行制御 | ❌(できない) |
改善後の運用自動化 | ❌(外部対応が必要) |
データからの課題発見 | ✅(強い) |
→「BPMツール」として売られるマーケティングの問題
「弊社のプロセスマイニングソリューションは、BPM導入を支援する包括的プラットフォームです」(と言った売り文句)
→ これは厳密には不正確で、実態としては:「見える化」には強いが「設計」「実行」「改善の実装」には別の仕組み(BPMS)が必要。という構造です。しかしこの曖昧な言い回しが、企業側の誤解を招いています。
というのがChatGPTからの返答でした。
3.まとめ
BPMが正しく導入(BPMNで現状分析、設計、BPMS実行、改善の実装、分析、再設計)できていれば、プロセスマイニングツールが不要である。ということを述べました。
プロセスマイニングツールはBPMを始めるキッカケとして一度だけ使って、主に基幹システムのログを使ってざっくりとした現状分析をする、という程度の使い方しかできないということでしょう。ここに多額の費用と時間をかけるのであれば、BPM(BPMN+BPMS)を正しく導入するべきだと思います。
私の経験から言えば「現場の課題を把握していないのは経営者であって、現場は現場の課題を把握しています。」課題を明確に誰にでもわかるように表現する方法(BPMN)を持っていないだけだと思います(「課題」と「愚痴」が区別できていない)。
よってプロセスマイニングツールの導入のキーマンは現場の課題を知らない経営者であるため、経営コンサル会社(それを真似しているブランド力のあるシステム会社)がプロセスマイニングツールを担いで商売をされているということかと思います。
現場の人間が地道にBPMN図を描いて現状分析をするということをせずに、ChatGPTが言っているように「ツールがあれば業務が改善される」という幻想から導入されているということでしょう。
「業務の課題は現場が知っているのに、その人材を活かすことなく多大なお金を外部に対して流出させ、丸投げする」というのがプロセスマイニングツールといってもよいでしょう。そして「ざっくりとした現状分析」だけでは大した成果がでないということだと思います。
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