非定型業務こそBPMで管理すべきこと―メールで部門間業務が行われているという実態

 一般社団法人BPMコンソーシアム 代表理事 山原雅人

 BPMを定型業務の標準化や承認決裁ワークフローの自動化を思い浮かべる人が少なくありません。しかし、企業で本当に問題となっている業務は、定型業務ではなく非定型業務です。BPMは非定型業務こそ管理し、PDCAサイクルを回して改善を実施する手法と言えます。
 昨年から今年にかけて中堅・中小メーカー(従業員数100人から2000人規模)を数社をご支援する中で共通して見えてくる課題があります。
営業と設計、開発、製造など、部門をまたぐ業務の多くがメールなどによる情報共有に頼っていることです。営業担当者は顧客から仕様変更や追加要望を受けると、関係しそうな担当者全員へメールを送ります。受け取った側は、そのメールが自分に関係する内容なのか、自分は何をすればよいのかを自ら判断をしています。その結果、関係のないメールを読むというムダな時間が費やされ、逆に重要な内容を読み飛ばしたり、漏れが発生したりします。「伝えた」「聞いていない」というトラブルも、このような運用から生まれています。

 今回は「情報共有」というものが「どこかのシステムやデータベース、ファイルサーバーに保存した」または「メールなどで投げた」ことで共有されたと認識していることから発生する問題をBPMでどのように解決するかということを述べてみたいと思います。
目次
1.情報共有では仕事は流れない
2.非定型業務だからこそBPMが必要になる
3.BPMは「仕事の流れ」を管理する
4.まとめ

1.情報共有では仕事は流れない

 問題なのは、「情報共有」と「仕事の受け渡し」を同じものと考えていることです。メールは情報を届ける手段です。しかし、業務プロセスで必要なのは情報ではなく仕事の受け渡し(ハンドオフ)です。本来であれば、営業担当者が進捗(誰がボールを持っているか)を確認、判断し「○○設計担当に確認依頼する」「○○製造担当が検討する」と仕事を渡すべきところを、多くの企業では「関係者全員へメールを送り、受け取った人が判断する」という運用になっています。つまり、送信者が行うべき判断を受信者へ委ねているのです。これは業務設計の敗北であり、送信者によるタスクの『責任放棄(丸投げ)』に他なりません。これは進捗が見えていないことも原因だと言えるでしょう。電話で誰が今、ボールを持っているか「聞きまくる」ということも現実的ではないため「メールで一斉に送る」という手段を取ることになるのだと思います。
 BPMNではシグナルイベントのような運用です。発信者が受信者を意識しないで発信している。受信した人が判断してタスクを始める、または終了させる。こういった運用はBPMでは実際にはない(BPMSに実装できない)のでシグナルイベントを使った経験が私にはありません。(シグナルイベントをリンクイベントのような使い方をすると解釈しているBPMSがありますが、それは仕様違反です。)

2.非定型業務だからこそBPMが必要になる

 こうした問題を解決するために、SFAやCRM、生産管理システム、プロジェクト管理ツールなどを導入する企業は少なくありません。しかし、これらは部門内の業務を管理する仕組みであり、部門間の業務を管理するものではありません。また「すべてを一つのシステムに統合すれば解決する」と考える企業もあります。しかし、部門間の業務は案件ごとに関係者や進め方が変わる非定型業務です。このような業務を一つの固定した流れへ当てはめようとしても、例外処理ばかりになり運用できなくなります(またはシステム外作業が増え属人化が進む)。BPMが管理すべき対象は、このような部門間の非定型業務です。
 重要なのは流れを固定することではありません。案件ごとに異なる流れであっても、「誰が判断し」「誰へ仕事を渡し」「現在どこまで進んでいるのか」を管理することです。

3.BPMは「仕事の流れ」を管理する

 前述のようにBPMは、定型業務を自動化するための仕組みだと思われがちです。しかし、本当に価値を発揮するのは、営業・設計・開発・製造など、多くの部門が関わる非定型業務です。情報を共有するだけでは、仕事は進みません。必要な人に必要な仕事を渡し、その結果を次の担当者へ確実につないでいく。この「仕事の流れ」を管理することこそがBPMの本来の役割です。非定型だから管理できないのではありません。非定型だからこそ、BPMで管理すべきなのです。
 

4.まとめ

 ここで勘違いが発生するのは標準化と共通化の混同です(BPMの「業務の標準化」を「共通化」と混同してませんか?参照)共通化とは一つのプロセスに押し込めることであり、標準化とは案件ごとに違っても管理方法を標準化することです。
・判断の仕方
・仕事の受渡し
・進捗管理
・責任の明確化
これらがBPMでは標準化できるということです。