第2回:2023年セミナー参加者の声(BPMNレベル1記述・演習セミナー編)

  BPMコンソーシアムで最も参加者が多いセミナーが「BPMNレベル1記述・演習セミナー」(以下レベル1セミナー)です。2019年のBPMコンソーシアムのセミナー開始から現在に至るまでご参加いただいたのは、延べ914人(企業内研修除く)になりました。その内400名弱がレベル1セミナー参加者です。レベル1セミナーの参加者が多いのは、さまざまな理由から「国際標準の業務フローの描き方」を学びたいからだと思います。「具体的な描き方が知りたかった」と「BPM全般の中でBPMNの位置づけを理解したい」というところで大きな差があると感じます。「レベル1セミナーに参加される前に入門セミナーを受講されたか」「自ら参加したいと思って申し込まれたのか」によっても反応に差があります。レベル1セミナーは、さまざまな目的や動機で参加されているので当初から試行錯誤を繰り返して現在の形になっています。以前は「何でシステム(BPMS)の話をし始めたのか」「このシステムを売りたいのか」というような誤解の声もありました。
 「セミナーを受講して気付いたこと」「BPM(BPMN)を展開する上での課題」「BPMN(BPM)の魅力」に関して、参加者の声をまとめてみたいと思います。

目次
1.セミナーを受講して気付いたこと
2.BPM(BPMN)を展開する上での課題
3.BPMN(BPM)の魅力
4.まとめ

1. セミナーを受講して気付いたこと

 セミナーでは、記述ツールを使って「演習を行いながら解説」を繰り返しながら進めていくために「BPMNの記述の仕方がわかった」という声が最も多いです。そうでなければ、このセミナーの基本的な価値がありません。
 次に多いのは「BPMとBPMN、BPMSの関係が理解できた。」という声です。ここは入門セミナーを参加されずにレベル1セミナーに参加される方が多いため、テキストを改定して、お話しをしてきた効果かと思います。「BPMSがBPMNを描くための記述ツールであるという誤解」「BPMSがローコード開発ツールであるという誤解」が参加者には解消していただけたかと思います。

具体的には以下です。
【BPMNの記述の仕方がわかった】

・適度に演習をはさみながらの説明で、全体的に理解しやすかった。
・演習の仕掛けはわかりやすく、少しずつ工程が進み、理解しやすかった。
・実際にどのような手順でBPMN図を描くのか、本を読んだだけでは学べなかったことを学べました。
・記述のルールはよく理解できてよかったが、それ以上に読み易くするための細かい補足などがとてもよかった。

【BPMとBPMN、BPMSの関係が理解できた。】

・BPMN,BPMSの全体感が理解できました。
・BPMN/BPMSというものがあるということを知った。
・BPM、BPMN、BPMSとは何なのか、使うことによってどのようなメリットが得られるのかを改めて学ぶことができた。
・BPMNとそれをBPMSで運用する流れが理解しました。

2.BPM(BPMN)を展開する上での課題

  圧倒的に多いのは「実務者がBPMNを使いこなすようになることが難しい。」という声です。ここは「ビジネスアジリティ・マニフェスト」の「あとがき」にもあるように
・時間がかかるだろうし,熱心に取り組む必要があるだろうし,忍耐も必要だろう。
・それらを実践に移し,新しい生き方として,新しいパラダイムとして,繰り返し,段階的に,献身的に実現することをコミットすることである。
・それらを無視するのは,ますます動的で複雑なリスクの高い環境において,いかにビジネスを成功させるのかということよりも,ソフトウェアをより迅速に構築することの方が重要だと言っているようなものである。
 マニフェストでは「誰が」とは言っていません。組織環境やBPMを導入する目的によっても変わるからだと思います。BPMコンソーシアムでは効率や維持という点で業務を最も知っている実務者が描くことをお勧めしています。誰かが聞き取って描くと誤解が生じる、誤解を解消するのに何度も打合せをする。聞く相手によって言うことが違うので調整が発生する。ということをするのであれば業務を知っている実務者自身が描き、実務者間で調整することが効率的であることからお勧めをしています。


 また「単なる作業の自動化」であればプロセスマネジメントではないのでBPMである必要はありませんし、BPMNを使う必要もないでしょう。業務フローを議論の中心置くために読みやすさも特に必要ないと思います。IT担当者が実務者から聞きとって伝統的なフローチャートで書けばよいと思います。
なぜならば、その業務フローは一度の自動化が終われば、ゴミになるか放置されるからです。また自動化開発と関係ない業務の部分は描いても意味がないでしょう。(BPMSに実装するのであれば「動く業務マニュアル」として必要になりますが。)
 DXが「単なる作業の自動化」をすることであれば、昔から実施して来たことであって何も新しいことではないでしょう。ローコードやノーコードで自動化するのがDXならば、EUCツールともいえるNotesやERP(業務統合パッケージソフト)を使ってもDXだと言えてしまうのではないでしょうか。DXは「一般的にローコードやノーコードのDXツールだと言われるものを使えばDX」というような話に陥っているように思います。(話がやや逸れますが「市民開発」という言葉を私は好みません。IT技術者は市民では無く特別な貴族階級であるかのような「上から目線」のイメージがあり、この言葉を聞くと寒気すら感じます。)前述のビジネスアジリティ・マニフェストの「いかにビジネスを成功させるのかということよりも,ソフトウェアをより迅速に構築することの方が重要だと言っているようなものである。」ということだと思います。

 次に多いのが「BPMNを描くことの意味を実務者に理解してもらうことが難しい」という声です。企業・組織内研修をするという手段もありますが、それだけでは不足します。BPMコンソーシアムは「実践」をお勧めしています。ベンダーなどからBPMSを貸与してもらい、安価に自らが中心になって実践することです
「企業・組織内研修」も実践する「モデルプロセス導入支援」もBPMコンソーシアムでは提供しています。我々の「モデルプロセス導入支援」をPoC(概念検証)と呼ぶ人がいますがPoCではありません。概念は何度も検証済で「経験」をしてもらうことでBPMを理解してもらうことが「モデルプロセス導入支援」の目的です。ちょっと余談ですが、ピーオーシーと呼ぶのならまだいいのですが、これを「ポック」と呼ぶ人がいるのですが「音の響きが間抜け」で、これから「失敗」するって音がしている感があり嫌いです(笑)。

3.BPMN(BPM)の魅力

ここは大きく2つに分かれます。

 一つはBPMN図に関するコメントで「BPMN図はわかりやすく、読みやすい業務フローで共通言語的に使えそうだ」という声です。
これは演習で書き、読みをしたことでの実感から言われていると思います。セミナーの性格上、これが最も多いコメントです。
問題は「何のために業務フローを描くのか」という目的が持っているのかどうかです。
 以前のコラムでも書きましたが

・国際標準であるBPMNを使うと描き方が統一される。
・BPMNで描くと改善すべき課題が見つかる。
これを盲目的に信用している人がいる
。ということです。

良く考えていただければわかりますが「BPMN」を「業務フロー」と置き換えても可能なことです。
→伝統的なフローチャートでもBPMN図でも記号やその使い方は統一されていても描き方は統一できないですし、統一するための組織内ルールが必要です。
→「改善すべき課題」は「誰にとっての課題か」であり、誰と議論するかで変わりBPMN図だからといって課題が発見できるものではありません。
 (これはセミナーで良く質問され答えています。)
そうすると「国際標準であることの意味」とは何かです。これはコラムの「あなたが描いているのはBPMN図ではありません」を参照してください。

もう一つはBPM全般に関するコメントで以下のような声がありました。

・組織横断で改善していく手法がとても良いと感じた。
・事業部や会社レベルでの業務改善するためにどのような流れで実施していくのかの一つのパターンを知ることができてよかったです。
・業務改善、課題解決を含めてシステム設計ができる点が魅力です。
・BPMS導入で通常のマニュアルや業務フローと異なる利点。

4.まとめ 

 BPMレベル1セミナーに参加された方の声をまとめました。半数の参加者は「国際標準の業務フローの描き方」を学び「具体的な描き方が知りたかった」という目的で、前述のビジネスアジリティ・マニフェストの「あとがき」と同様で手段が目的化されていると言えます。すなわち「なぜBPMNで業務フローを描くのか」という目的が忘れ去れていると思われます。お話しを聞くと「業務標準化のため」「業務改善のため」「自動化のため」と答えられますが、どれも、バラバラでは他の手段でも良くBPMNで無くてはならない。という理由にはなりません。
 BPMNで無くてはならない理由は以下の図で表されています。上記3つのこと(「~のため」)に対して継続的にPDCAサイクルを回すため、さらにビジネスアジリティを向上させるために「すばやく要件を的確に伝えるために実務者の道具となっているBPMNが必要」であり「BPMSにすばやく反映させるためにBPMNが必要」ということになります。

 レベル2セミナーの参加者は、業務改善・改革のPDCAサイクルを回すBPMを学びたいという方に限定されることになってしまっています。レベル1を受講された半数の人しかレベル2セミナーを受講されていません。入門セミナーでBPMを理解された方も残念ながらレベル2セミナーには参加されていないというのが実態です。
 BPMはBPMNを描き、BPMSに実装してみる「実践」をしない限り正しい理解はできません。ただ業務フローを描いているのでは、業務が可視化できた気分になる、業務改善が達成された気分になるだけで、現実は誰も業務フロー通りに業務を行っていないという実態になります。それでは「改善ごっこ」をしているに過ぎないと私は思います。
 

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