ペーパーレス化とBPM(ビジネスプロセス・マネジメント)の違い

 一般社団法人BPMコンソーシアム 代表理事 山原雅人

 情報システム部門やIT系の技術者が中心にBPMの導入を考えると、承認決裁ワークフローのようなフローしか描けないということがあります。そして日本において多くのBPMSを使った事例は、残念ながら承認決裁ワークフローシステムでも実現できることを実施し、それをBPMだと言ってしまっています。そのことがBPMに対する誤解の発信になっていると言えるでしょう。
2023年に書いたコラム「一般的な業務フローとBPMN図との違い」での、エピソードをBPMN図として示し承認決裁やペーパーレス化とBPMがどのように違うのかを説明したいと思います

目次
1.「一般的な業務フローとBPMN図との違い」でのエピソード
2.プロセスで業務を管理する(BPM:ビジネスプロセス・マネジメント)とは
3.まとめ

1.「一般的な業務フローとBPMN図との違い」でのエピソード

 「一般的な業務フローとBPMN図との違い」の中の私自身が体験したエピソードとして「金融機関ではBPMSを導入してマニュアルレスになっているという話を聞きます。ところが実際に融資を受けるために銀行に行くと『すみません、前回この資料をお渡しするのを忘れていました。記入、捺印してもう一度、来店してください。』って言われ『標準化されていれば、その書類は前回、来店したときに渡すよね。』と思いました。(中略)互いに無駄な作業を増やす結果になっていますが、これは改善すべき課題ではないということでしょう(中略)。ところが書類などを受けとったという証拠を残すための『預かり書』はタブレットPCとタッチペンでサインしてポータブルプリンターで出力している。『人の業務をプロセス管理していない。』とは、まさに、こういうことだなって思いました。『ペーパーレス化する』という目的から、システムを使って紙が無くなる部分を探してシステム化し「ペーパーレス化」が実現したと言うのでしょうか。」
 これをBPMN図で具体的に描くと以下のようになります。BPMNでフロー図を描いたからといっても、これはBPMではありません。

2.プロセスで業務を管理する(BPM:ビジネスプロセス・マネジメント)とは

 「BPM(ビジネスプロセス・マネジメント)としてのプロセス管理、プロセス改善とは」具体例を示しましょう。上図の中に課題として「融資額別など顧客に提出をお願いする資料が紙マニュアルしか無く(中略)不足すると何度もお客様に提出をお願いしなければならない」という課題があります。これをBPMとして解決する、また承認決裁や受取書の自動保存といったことも同時に実現をするフローを考えてみましょう。
まず、ユーザータスク(人の上半身のアイコンがある角の取れた四角形)はBPMSにおける画面を表します。

①顧客が現状のようにブラックボックスプール(外部実体を表すプロセスが描かれていないプール)だけではなくレーンにもなっています。
②銀行のHP上に組み込まれた「融資申込」画面から顧客自身が融資を申込みをします。
③申し込まれると営業担当は内容を確認し連絡をします。メールはメーラーから送られるのでは無くBPMSから自動で送られることを示しています。そのメールにはBPMSの書類提出のための画面のURLが貼り付けられています。(二重丸のメッセージ送信中間イベントは自動化を表します)
④顧客はURLからBPMSの画面を開き必要書類を準備してBPMSの画面に添付します。必要な書類が添付されていない場合は画面を終了させることができないため、顧客は書類が不足しているということに気が付きます。必要な書類が提出されたら、事務担当の「添付書類確認」の画面に引き継がれます。
⑤事務担当は添付書類の画像が鮮明であるか確認します。(将来的にはここはAIが担当します。)
⑥承認決裁ワークフローがサブプロセスとして起動されます。非承認の場合はプロセスが停止されます。
⑦同時に受け取った書類の受取書が自動発行され文書サーバーに自動保存されます。(歯車のアイコンのタスクはITシステムが自動で行っているタスクです)自動保存の後、顧客に自動で受取書のメールが送られます。

少額融資のため、このプロセスはシンプルであると思ってください。BPMでの業務改善が理解できたでしょうか。プロセス管理をすることで結果としてペーパーレスになっています。ペーパーレスができるところを探して実施すると最初に描いたようなプロセス図になってしまいます。
 大きな金額の融資の場合はもっと手続きが複雑かもしれません。すべての融資のパターンに対応するプロセス図を1つで描くということはお勧めしません。それぞれ別々のプロセスとして管理することが大切です。(「対象プロセスを絞る」)。これが標準化のポイントであり、ITシステム開発で共通化しようとする失敗の原因になります。(参照BPMの「業務の標準化」を「共通化」と混同してませんか?

3.まとめ

 ビジネスプロセス管理(BPM:ビジネスプロセス・マネジメント)とは何か、ペーパーレス化することとは異なることを、やや抽象化した例で示しました。BPMがBPMSというシステムを使うからといって「ITシステム開発」という頭から切り替えないと、ここに書かれていることは伝わらないと思います。
 言い換えると「何を作るのか」ではないです「何をどのように管理をして改善していくか」という視点が必要になります。ここには業務知識と業務改善経験が必要です。ポイントは根本原因は何かということを考えて改善することであり、何の作業が自動化できるかを考えるのではありません。
 今回の例でいうと「人が間違って相手に伝える」ということが根本原因です。「間違わないようにするためには」を考えることです。これは工場の作業改善では「ポカヨケ」と言われていることです。事務作業ではBPMN図を描くことでポカヨケのしくみを考え、BPMSで実施のポカヨケを作ることです。