一般的な業務フローとBPMN図との違い

 最近のBPM導入でのご支援の中で、既存の業務フローを元にBPMN図に描き直していて、改めて一般的な業務フローとBPMN図の違いということを考える機会がありました。この違いが認識できないことがBPMを理解できない一つの原因であるようにも思います。2つフローは描く目的が異なっています。その違いを理解しないで、ただBPMNの記号を使うとBPMN図だと思っている方も多いと思われます。
 BPMN図を見せると「どの部分がBPMSというシステムになるのですか?」と聞かれることがあります。「全部です。BPMの対象は人の業務を含めてプロセス管理することですので。」と返答すると怪訝な表情をされます。(ここは補足説明が必要ですが、BPM入門 基礎知識+事例セミナーセミナーの内容そのものなので、このページでは不足しますので割愛します。)
 一般的な業務フローは、システム開発の現状分析では「おおよそ」の業務の流れの中で、どこでシステムが関係するかを見ることが目的です。よってシステムが使われる前後業務を知ってデータのインプット、アウトプットを意識して描くということになります。また業務マニュアルやISOなどでは、補足資料的に業務の流れがわかるようにする程度の役割だと認識されていると思います。

1.読んだままの通りに業務が行うことができるように描く
2.可視化とは?標準化ではないですか
3.まとめ

1.読んだままの通りに業務が行うことができるように描く

 BPMN図は、実際に読んだ人が、そのまま実務ができるように詳細に記述をします。前述のように、どこでシステムがどのように「使われているか」「使われるか」という程度のものが業務フローだという認識の人にとって、システムが担わない人が行う部分まで「なぜこのように詳細に描くのか」「人が運用でやることなので描く必要がない。」と言われます。まさにここが「BPMとは何か」がわかるか、わからないかの分岐点と言えるかもしれません。
 一般的な業務フローからBPMN図に修正する過程で聞き取りをすると、いろいろな意味で解釈できることが書かれています。質問をすると「実務ではどうやっているのかわからない」「実務者によってやり方が違う」ということを言われます。すなわち、その業務フローを描いた目的が、おおよその業務の流れが可視化(?)できることを目的として描かれているからだと思います。

現在、世の中で発生している多くの問題は人が行う業務が「標準化」されていないことが根本原因であることが多いのではないでしょうか。

 金融機関ではBPMSを導入してマニュアルレスになっているという話を聞きます。ところが実際に融資を受けるために銀行に行くと「すみません、前回この資料をお渡しするのを忘れていました。記入、捺印してもう一度、来店してください。」って言われ「標準化されていれば、その書類は前回、来店したときに渡すよね。」と思いました。金融庁がチェックをしないクリティカルではない業務は標準化してないということだなと認識しました。しかしながら互いに無駄な作業を増やす結果になっていますが、これは改善すべき課題ではないということでしょう(金融庁対策が主であり業務効率化改善ではない。ISO認証のためのISOに似ています)。ところが書類などを受けとったという証拠を残すための「預かり書」はタブレットPCとタッチペンでサインしてポータブルプリンターで出力している。「人の業務をプロセス管理していない。」とは、まさに、こういうことだなって思いました。「ペーパーレス化する」という目的から、システムを使って紙が無くなる部分を探してシステム化し「ペーパーレス化」が実現したと言うのでしょうか。RPAがブームだったときに、RPAが使えるところを探すために業務フローを描くといった話と似ています。

2.可視化とは?標準化ではないですか

 特に省庁、自治体に多いのですが「BPMN図を描いて可視化したいです。」と言われます。「何でBPMN図なのですか?」と聞くと「国が推奨しているからです。」「なぜ国が推奨しているのですか?」と聞くと「国際標準で統一させるためでしょうか。」と言うので「BPMN仕様は記号の意味や接続方法を規定しているだけなので、BPMNの記号を使っても統一されたBPMN図は描けないですよ。」という話を何度かしたことがあります。
 また業務フローを描いたから可視化できたというのも、前述したように目的がハッキリしていないと、いろいろな解釈ができるような業務フローが描かれることになるでしょう。「業務の標準化をし業務改善を継続的に行うためにはBPMSが必要だ」という話を丁寧に説明しても「S=システム=ブラックボックス」だという、既存のシステムの概念から抜け出せないという人がいます。BPMSによってブラックボックスになってしまうのであれば可視化ではないし標準化も維持できないです。もう少し頭を柔らかくしましょう、と言いたいです。

3.まとめ 

 「一度だけ改善できる。」ということは、従来のシステム開発も業務フロー記述も同様に実現できると思います。
 システムにおいてはBPRという言葉が使われてきました。今もシステムが出来上がった時点がゴールで改善は終了です。システムは内外環境が変化すると業務フローには立ち戻らずシステム改修されます。それが繰り返されると業務ルールがシステムに埋没しわからなくなる。プロセスマイニング・ツールというのは、その分析に使うものだと思います。これも1度だけ使うものであり根本解決の手法、ツールではないでしょう(使い続ける=根本解決を放置している=同じ失敗を繰り返している。ということを意味するでしょう。)
 業務フローも同様で、業務課題を明確にするために記述して一度だけ実運用で改善されますが、多くの場合は内外環境が変化しても修正されることはなく放置されます。よって業務フローの維持管理は永遠の課題だと言われてきました。(「モデルプロセス導入改善とBPM導入方法について」参照)
 BPMは、永続的に業務を標準化して改善し続けるためのマネジメント手法です。一度だけであれば、いろいろな手法やパッケージシステムもあるでしょう。それらの手法やシステムは実務者の道具となり素早い変化に耐えられますか。そうでないとプロセスマイニング・ツールを使い続けるのと同様で「今までと同じ失敗を繰り返す。」ということでしょう。

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