BPMは古い?経験から考え方を変えてみる
BPMは、今の「DX」(デジタル・トランスフォーメーション)と同じで2008年前後の流行語でした。流行語の時代というのは実態が見えない、導入方法が明確でなく試行錯誤をしている期間と言えるでしょう。「BPMが古い」のは、過去の流行語としてインパクトがないということから、BPMSを売るベンダーもBPMという言葉を使わない時代がありました。流行語というのは時代が反映されるものだと思いますが、IT系の日本での流行語は海外からの情報を盲目的に受け入れている、または利用している感があります。「Gartnerが・・と言っている。」といったことを聞きますが、今年パリでは「何色が流行しています。」のように聞こえるのは私だけでしょうか。海外で流行している経営手法やシステムが、日本にそのまま使われて成功している事例は、そもそも少ないのではないでしょうか。日本企業に合うように応用する必要があることは過去の事例を見ればわかることです(「BPMと日本型経営システム」参照)
昨今、BPMが再注目されているのは流行語としてではなく時代の要求、市場の要求からではないかと思います。
1.人(誰か)に頼る
2.経験に勝るものはない
3.まとめ
1.人(誰か)に頼る
何かに頼ることと依拠することは異なると思います。企業内のIT部門(情報システム部門)が「ベンダーやSIerに丸投げしてITシステム導入をしていることが根本問題である。」と言われてから久しいものの、改善されつつあっても、いまだに解決されていない感があります。IT部門の在り方がいろいろと議論されてきましたが、解決されている事例も「その人」がいる(いた)からできたのではないかと思われる部分があります。「しくみ」や「土壌」「企業風土」を作るのは大変な時間と努力を要するからです。それをIT部門が主導して実施できるのかという問題があると思います。実施しようとしても「電算室」の人間が経営に口出しをするな、というようなことを言われてしまうような企業風土があることがあります。
というのは、私自身がそうだったからです。ERP(業務統合パッケージシステム)を自社主導で導入したものの私が辞めた後、そのシステムの本当の意味を理解して「使いこなそう」とした人がいたのかと思います。(その会社はシステムができたら、私は不要という扱いをされたので辞めました。)「今後、みんなで継続して使いこなすことこそが大切で、システムができたら終わりではない。」と訴えても、それは私の保身のための詭弁だと捉えられました。そういった体質の企業では「IT部門が主導で・・」などというのは夢物語のような話でしょう。
特定の人に頼らない「しくみ」を作り、企業風土をより良く変えていくことこそが大切であり、その「道しるべ」としてBPMというマネジメント手法が利用できます。
2.経験に勝るものはない
過去のBPMの失敗を経験した人には2種類いるように思います。BPM(BPMS導入?)が失敗し、もう流行語ではないので売れないので諦めてしまう。新しい流行語で新しい仕事をすればいいという人と、失敗したことを糧に本来のBPMとは何をすべきだったか、どのような手順で進めるべきだったのかを考える人です。IT業界や経営コンサルティング業界では残念ながら前者が多いと思います。私のような製造業出身者にとって、随分と乱暴なビジネスをしているように感じます。
私は過去にBPM導入のお手伝いして、超上流工程で手を放した後、IT企業が主導する、従来のシステム開発の考え方で進めることで誤った方向に進んでしまった(「BPM「体制」「しくみ」の重要性:PMBOKの壁?」参照)。という経験をしました。ある程度、軌道に乗るところまで、お客様と一緒に悩み、苦しんで対象企業・組織に適した「しくみ」を作っていく必要があると考え、現在のようなご支援の形になりました。(BPM導入支援サービス)
BPMの実践経験もないのに「わかったつもり」の人が最も困った存在です。BPMとBPMSを同義語として話をしたり、BPMNを描くだけで永続的に何か良い改善ができるかのような誤解を与えたり、(「モデルプロセス導入改善とBPM導入方法について」参照)BPMSとローコード開発ツールを同じものと認識させたり(「ローコード開発ツールとBPMの違い」参照)、誤解をしたまま間違った発信をされること、間違った導入で失敗をして「BPMが失敗した」とされることが我々にとって最も困ることです。
正しい経験をしていただくために、まずはBPMN~BPMSを繋げて1プロセスを業務改善をするモデルプロセス導入をお勧めしています。
3.まとめ
昨年、新しいセミナーとして実施した「BPMNレベル2セミナー(Pega Infinity版)」の準備でBPMSのPegaを勉強しました。我々の「BPMN準拠でなければBPMSではない。」という発信からペガジャパンからは「PegaはBPMNに準拠していないからダメではないか。」と言われたこともあり、中々セミナーが実現しませんでした。しかし勉強して使ってみるとそうでもないことに気が付きました。すなわちBPMN~BPMSに「スムーズに繋がる道筋」(BPMの改善ステップの1~5まで)を作ることができるBPMSであれば「BPMN準拠でなければBPMSではない。」という考えに固執するべきではないと思いました。これでは実践経験をしていないのに「ダメだ」「できない」と決めつけているのと同じだと気が付きました。
すべてのBPMSがBPMN~BPMSへの「スムーズに繋がる道筋」が作れるかどうかは、わからないです。BPMSとして最低、有していなければならない機能があれば、やってみる価値はあると思います。
「どのBPMSがお勧めですか?」と聞かれることも多いですが、それぞれのBPMSには長所と短所があります。どのBPMSを使用してBPMを導入するかは、お客様の環境、体制にもよるため、どれが最も良いBPMSであるとは言えないです。
BPMはマネジメント手法です。多くのBPMSが対応できるように「繋がる道筋」を各ベンダーと協力してコンソーシアム(共同体)として作っていくことがBPMの普及、発展に繋がると考え、今後、間口を狭める必要はないと考えることにしました。この考えに至ったのは、Pega Infinity版のセミナーの準備ではあるもののBPMNで描いた1プロセスを実践的に実装した経験からです。BPMにおいて小さくても実践してみることが大切である、ということを自ら再確認しました。人から聞いた話や机上の空論ではなく実践「経験」が、いかに大切かということだと思います。
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