見える化・可視化改善とBPM
ひと昔前、団塊の世代が定年退職することで属人化している業務の引継ぎ問題がありました。 現在では日本の人材も流動化しており、転職は当たり前の選択肢になってきました(BPMと日本型経営システム参照)。会社の制度的には終身雇用が維持されてはいますが、より良い会社、職場に転職される人が多くなったと思います。そのことから属人化が恒常的な問題になっていると言えます。
ホワイトカラー(事務、営業など)の業務は製造現場などとは異なり、負荷が見えないという問題があります。また、裁量労働制をとっていることから業務に従事する実際の時間を捉えきれていないというのが実態ではないでしょうか。入退室管理によって時間を捉えることができていたものの、コロナ禍によってテレワーク(在宅勤務)になったことにより、時間管理ができなくなったかと思います。
BPMによる「業務の見える化・可視化改善とは」この2つの問題を解決することになります。
目次
1.見える化・可視化改善について
2.属人化問題とは
3.裁量労働制、在宅勤務の問題
4.まとめ
1. 見える化・可視化改善について
「見える化」という言葉は、いつから使われるようになったのかは不明です。私が食品製造業に勤めていたころ、トヨタでは「目で見る管理」という言葉を使っていました (今でも死語ではないようです)。「見える化」は、製造業における目視管理を指しており、製造進捗の掲示や、異常が発生したときに「アンドン」を点灯させるような管理などを示していると思います。「気付き」を与えて、イレギュラー業務を開始するためのトリガーを設定する管理と言えると思います。
一方、世の中の書籍を見ると「見える化」というのは、ホワイトカラー業務での事務テクニック的なことを指していることが多いようです。簡単な例では、手帳と付箋を上手く利用するということや、TO-DOリストを見えるように掲示するというような内容も含まれるようです。
後者を期待した方は書籍「見える化、可視化のための業務フローの描き方」を買ってAmazonで☆1つを付けた方だと思います。書籍にBPM、BPMNという言葉を使わなかったのは、BPM(N)を知らない方にBPMを知ってもらうため、という意味もありました。知らない方が間違って買ってもキチンと読んでほしかったなと思います。決して特定のソフトウェアを売るための本ではありませんので。
BPMにおける見える化・可視化改善とは何かについては「BPMとは」「BPMNとは」「BPMSとは」を読んでいただければと思います。
2. 属人化問題とは
属人化問題とは、「その人」しか知らない、できない仕事がある。「その人」がいれば、他の人は知る(できる)必要がない。「その人」も自分しか知らない(できない)仕事があることで、自分の存在価値を高める、または維持できる。というような思考になっていることだと思います。
製造業 (特に中堅、中小企業) において、団塊の世代が持っている技術を継承できていないというのが属人化が問題視された最初の大きな出来事であったと思います。そこで定年延長や嘱託社員といった立場で残ってもらい、その間に標準化をして伝承しようというような動きがありました。製造技術は比較的、標準化やデータ化がしやすいために、その後、大きな問題にはならなかったと思います。
一方、ホワイトカラー業務に関しては、人材が流動化しているために「その人」が会社を去るというときに「騒ぎ」になります。定年延長というような方法で何とかなる話ではありません。ホワイトカラーの業務をどのように標準化し続けるかは過去数十年に渡り、いろいろな手法を使っても成しえなかったことです。BPMはそれを実現できる手法であると思います。
3. 裁量労働制 在宅勤務の問題
裁量労働制は「働き方改革」になるのでしょうか。
・みなし労働時間と実際の労働時間がかけ離れている。
・実際は、出退勤時間が決められており時間管理をしている。
・結局は、わかりやすい結果だけで評価をされてしまう。
というように、そもそも何を目的としているのか疑問を感じます。安い賃金で死ぬほど仕事をさせる制度という、本来の目的とは異なる使い方をされる危険性があります。うつ病の患者や自殺者が増える原因にもなりかねないので 結局、時間管理をすることになっていると思います。
コロナ禍での在宅勤務(テレワーク)の増加は、これらの問題をさらにクローズアップさせることになると思われます。時間管理がしづらい環境になるためです。その原因はホワイトカラー業務のプロセスが見えづらいからです。BPMは見えにくい「人の業務」を見えるようにするための手法です。
4.まとめ
ホワイトカラーの業務を改善するという試みは、過去、様々は方法がとられてきました。残念ながらシステム導入による改善と同様、その時「一度だけ」の改善に留まりました。属人化問題を解決するために業務を標準化する、人の業務をリアルタイムで見える化・可視化することを「継続的に」行う体系的な手法はBPM以外には今のところないと思います。ロボットが人の業務を代わりにやってくれるようなRPAやコンピュータが自ら考えて人間のように仕事をしてくれるというAIが、もうすぐそこにあるように思っている人はいないと思います。
BPMは手法であり、IT業界用語でいう「ソリューション」ではありません。BPM手法で結果的に「どのように業務改善を実現したか」は組織によって異なります。例えば「営業業務は、こうやれば改善できる」というようなテンプレートのようなものはありません。それは皆さんがBPMという手法を使って作りだすものです。「どこかに、そういったソリューションがあるのではないか」というのは幻想です。どのような環境になっても会社を継続的に発展させるための具体的な方法がある。と言っているのと同じです。そのようなものがあるのなら、世の中から倒産する会社は無くなるでしょう。もう、そろそろ幻想を追うのはやめなくてはならないのではないかと思います。