第3回:2023年セミナー参加者の声(BPMNレベル2記述演習+BPMS実装セミナー編)

  前回と異なりBPMコンソーシアムで最も参加者が少ないセミナーが「BPMNレベル2記述演習+BPMS実装セミナー」(以下レベル2セミナー)です。過去の参加者は全セミナーで延べ957人(24年3月末)になりました。その内239人がレベル2セミナー参加者です。レベル2セミナーの2日目はBonita版(現在は実施していません)とIM-BPM版、Pega Infinity版というように様々なBPMSで実施しました。レベル2セミナーの参加者の特徴は「真剣にBPMの導入を考えている」「BPMNからBPMSにどのように繋がっていくのか」を「具体的に知りたい」という人が多かったと思います。
 レベル1セミナーの参加者の声と同様に「セミナーを受講して気付いたこと」「BPMを展開する上での課題」「BPMの魅力」に関して、参加者の声をまとめてみたいと思います。

目次
1.セミナーを受講して気付いたこと
2.BPMを展開する上での課題
3.BPMNの魅力
4.まとめ

1. セミナーを受講して気付いたこと

 1日目のセミナーでは、レベル1と同様に記述ツールを使って「演習を行いながら解説」を繰り返しながら進めていくために「BPMNの記述の仕方や記号の意味がわかった」という声が最も多いです。
 2日目ではBPMSを実際に触ることで全体像が理解できた。BPMN図とプロセスデータ関連表でBPMSをどのように設定していくかが理解できた、という声が多いです。ハンズオンセミナーのように設定を、ただ黙々と入力していくと詳細は良くわからないけど動いた。というようなセミナーではなく、BPMN図とプロセスデータ関連表から、それぞれの設定の意味を理解しながら実装していくというセミナーなっているからだと思います。

具体的なセミナーのアンケートのコメントは以下です。
【1日目BPMNレベル2記述
・実際レベル2のBPMNを描いてみて描き方の作法がよくわかった。
・今までBPMNによるフローの書き方は独学でした。境界中間イベントやエラーイベント、包含ゲートウェイなどが、WEBの情報だけでは理解しにくいところが研修で確認できてよかったです。

【2日目BPMS実装Pega版
・Pegaの全体像が理解できた。
・Pega上でプロセス(ケースタイプ)を作成する際のステージ/プロセスの切り方について、自由度が高くてなんでもできてしまうので、どのように設定の標準を定めるかという点の参考になった。
・ステージをレーン単位のハンドオフで定義するは、確かに分かりやすい作りになると感じた。

【2日目BPMS実装IM-BPM版
・プロセスデータ関連表を作成することの意味がわかった。
・IM-BPMの説明は丁寧で分かりやすかった。BPM、BPMSに関しての質疑応答の時間が豊富にあって不明点が解消できて良かった。

2.BPMを展開する上での課題

 「PDCAサイクルを回すことが重要で、そのためには実務者がBPMS実装に実務者が関わることができるのか「従来のシステム開発のようなBPRとの違いを経営層に理解してもらうのが難しい。」という声が多かったと思います。

 「システム」及び「システム開発」という概念が、組織内で固定化されている。ということだと思います。
 すなわち
 ・システムはシステム導入したときがゴールというBPR的な概念。
 ・システム開発の社内規定がウォーターフォール型で決められてしまっているという課題。

 そのためBPMSが登場すると情報システム部門が主導となってしまう。従来のシステム開発のスタイルを取らざるを得なくなる。
情報システム部門が社内全体の業務改善、改革の音頭を取るような部署になっていて、実務部門を巻き込み連携していく。ということができるのであれば良いのですが、多くはそうなっていないと思われます。

 昨今、BPMに関してチャンスなのは、「DX部門」ができていること(DXに関してはよくわからないですが・・)だと感じます。情報システム部門の名称が変更されただけのDX部門ではなく、実務部門と情報システム部門出身者によって構成されているDX部門はシステム導入ではなく「業務改革、改善」を目指しているからだと思います。

 しかしながらBPMの扉を開くには企業風土を作らなくてはならず、そのためにBPMにおける「企業・組織内研修」を実施して理解者や「やってみたい人を増やす」ことが重要です。そして実際に1プロセスを導入、実践する「モデルプロセス導入」を行い肌感覚でBPMを理解することだと思います。

そして、いかに実務者主導でBPMを推進、維持するようにするかということだと思います。

具体的なセミナーのアンケートのコメントは以下です。
・PDCAサイクルを回していくために、必要なスキルをどのように広げるかが課題。
・BPMSの開発思想は独特であり、開発者でも頭を切り替えられるか。
・当初の投資対効果を経営層に説明するのが難しい。
・実現イメージを実務者から経営層まで理解してもらうことが難しい。

3.BPMの魅力

「実務者主導で継続的な業務改善・改革が実施できる」ということだと思います。

 そのためには、前述の課題を乗り越える必要があります。どのように乗り越えるかは企業、組織によって方法は異なるでしょう。一朝一夕でできることではないかもしれません。でも他によい方法があるのでないかと探すのは時間のムダかと思います。技術だけで解決できるのであれば、すでにいろいろなことが解決されているはずです。今更「DX」などと言う必要もないはずです。
「問題解決能力」というのは魔法ではなく、地道に培っていく努力が必要だと思います。

具体的なセミナーのアンケートのコメントは以下です。
・PDCAを回すところが重要であり、情報システム部門が主導ではなく実務者主導で実施していくこと。(しかし実現するために社内の新たな「しくみ」を作らなくてはならない。)
・業務プロセスを「しくみ化」しやすく、使った効果も見え継続的に発展できる点。
・口頭や文書上ではなく、ツール上で具体的な業務内容を詰める議論ができる点。

4.まとめ 

 BPMNレベル2セミナーに参加された方の声をまとめました。
 レベル2セミナーの参加者は冒頭に書いたように、真剣にBPMに取り組むことを考えておられる企業、組織の方々でした。ゆえに、セミナー内での質問も社内の課題に置き換えて、より具体的なものが多いです。
 改善のPDCAサイクルを回している製造部門が日本から減り、海外に流出したことが日本を変えてしまったのか。と思うことも多かったですが、かつての日本企業の強みは、参加者の方々とお話しをしていると、まだまだ消えていないなと思いますし消してはならないと思います。
(「BPMと日本型経営システム」参照)

次回予告

次回からのコラムは、官公庁のサイト上に公開されているBPMN図に関してメッセージフロー、データオブジェクト、シーケンスフローに関して誤った記述(BPMN仕様違反)を3回にわたって解説していきたいと思います。解説は508ページに及ぶ「BPMN仕様」とブルースシルバー著の「BPMNメソッド&スタイル」をベースとして論じていきます。
 仕様違反の誤った記述になるのはBPMN仕様そのものに問題があります。「非常に難解な文章」で、かつ「文書のみでルール化されていて記述例が無い」しかも「ルールがまとめて記述されておらず、ちりばめられている」からです。BPMNの記述解説書である「業務改革、見える化のための業務フローの描き方」の著者である我々、理事の間でもBPMN仕様に関して、しばしば誤解が生じることがあります。それをわかりやすく解説したのが世界的にも評価の高い「BPMNメソッド&スタイル」です。その記述例などを利用して公開すると著作権違反となるために致し方ないと言えるでしょう。しかしながら、国が明示しているBPMN図が仕様違反であっていいはずがありません。それが正しいと盲目的に信用する人がいるからです。なぜBPMN仕様では、そのようにルール化されているか。ということも含めて論じてみたいと思います。

「おまけ」です。

「BPMと日本型経営システム」というキーワードでChatGTPと対話すると以下のように出てきて驚きました。

User
BPMと日本型経営システム

ChatGPT
BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)と日本型経営システムは、組織の効率性と柔軟性を高めるために、しばしば比較・対比される概念です。それぞれのアプローチは組織の運営において異なる焦点を持っていますが、組織が目指す最終的な目標に対して補完的な役割を果たすこともあります。

・BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)
BPMは組織の業務プロセスを管理し、最適化するためのシステマティックなアプローチです。プロセスの効率性、有効性、適応性を高めることに重点を置き、技術の進歩を取り入れながら、継続的な改善を目指します。BPMは以下のような特徴を持っています。

プロセス中心: 業務プロセスのマッピング、分析、設計、実装、監視、そして最適化を通じて、組織全体のパフォーマンスを向上させます。
技術活用: 情報技術を活用してプロセスを自動化し、効率化します。BPMソフトウェアは、プロセスの可視化、実行、管理に不可欠です。
柔軟性と適応性: 市場や技術の変化に迅速に対応できるように、プロセスの柔軟性と適応性を重視します。

・日本型経営システム
日本型経営システムは、日本の企業文化に根ざした経営方法であり、以下のような特徴があります。

人間中心: 従業員の長期雇用、終身雇用制度、企業内教育、コンセンサス形成による意思決定など、人間関係を重視します。
組織の調和と一体感: 企業文化やチームワークを重視し、従業員間の強い結びつきと組織全体の調和を促進します。
改善活動(カイゼン): 継続的な改善を文化として取り入れ、小さな改善から大きな革新に至るまで、全従業員が改善活動に参加します。
BPMと日本型経営システムの関係
これら二つのアプローチは互いに補完的であり得ます。たとえば、BPMのプロセス改善の方法論は、日本型経営のカイゼン文化や一体感を持つチームワークにより、より効果的に実施することができます。一方、日本型経営システムは、BPMが提供するプロセス中心の視点と技術的なツールを利用することで、組織の柔軟性と効率性をさらに向上させることが可能です。

結局のところ、どちらのアプローチも組織が直面する固有の課題や目標に応じて、適切に組み合わせることが重要です。

User
親和性があるということでしょうか

ChatGPT
はい、その通りです。BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)と日本型経営システムは、異なるアプローチでありながらも、相互に補完し合う親和性を持っています。この親和性は、以下の点で特に顕著です。

目標の共有
両システムは、組織の効率性、効果性、そして持続可能性を高めるという共通の目標を持っています。BPMはこれをプロセスの最適化と技術的な改善によって実現しようとしますが、日本型経営システムは人間中心のアプローチと継続的なカイゼン(改善)に焦点を当てます。

継続的改善
BPMの核心部分には、業務プロセスの継続的な監視と改善があります。これは日本型経営のカイゼンの精神と直接的につながります。どちらも、小さな改善が積み重なることで大きな成果を生むという哲学を共有しています。

人間とプロセスの統合
日本型経営システムは、従業員のエンゲージメントと組織内コミュニケーションを重視します。BPMでは、プロセスの改善を通じて効率性を追求しますが、プロセスの実装と改善には人間の参加が不可欠です。従って、BPMを成功させるためには、従業員の積極的な関与が必要になり、これは日本型経営が強化する人間中心のアプローチと相互作用します。

柔軟性と適応性
市場や技術の変化に迅速に対応する能力は、両システムにとって重要です。BPMはプロセスの柔軟性と技術の適応を通じてこれを実現しようとします。一方、日本型経営では、組織の一体感と従業員の能力を通じて、変化に対する適応性を高めます。

このように、BPMと日本型経営システムは、互いに補完し合うことで、組織の全体的なパフォーマンス向上に貢献することができます。それぞれの強みを活かし、うまく統合することで、より強固で柔軟な組織運営が可能になります。

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