テレワーク、BPOにおけるBPM改善のヒント2 

 可視化というと、業務フローを描くことや業務マニュアルを書くと考える人がいます。その維持が困難であるという話は「BPMとは」「BPMSとは」などで書きました。BPMにおけるBPMNは単に業務フローを描くだけではなく、PDCAの改善サイクルが回るようにBPMSを使うことです。
 今回は、リモートワークやBPOなどで「見えなくなる」業務がBPMSのPDCAのC(チェック)の機能でどのように見えるかについてのヒントとなる簡単な事例を紹介したいと思います。

目次

1.見えないのは今に始まったことではない
2.BPMSのチェック機能の具体例
3.まとめ

1. 見えないのは今に始まったことではない

 ホワイトカラーの業務の進捗が把握できないのは、今に始まったことではないでしょう。その対策として朝礼や夕礼などの短いミーティングによる簡単な報告や日報での報告を実施されている組織も多いと思います。それはWEB会議システムの利用、紙からSFA( Sales Force Automation:商品名や会社名ではありません。) などに入力するということに変わっても同様だと思います。そのために、わざわざ業務の時間を費やしている(費用をかけている)ということになります。テレワークやBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)を進めると、顔を合わせて話をする機会が減り、業務の進捗がさらに見えにくい状態になっているのではないでしょうか。

2. BPMSのチェック機能の具体例

 BPMSのPDCAのC(チェック機能)に関して簡単な例で説明をします。BPMSを利用するとリアルタイムで業務が見えるようになり、問題がある場合は対策が取れるようになります。朝礼や日報などと違い、BPMSにわざわざ入力するのではなく業務を正しく効率的に実行するためにはBPMSが不可欠なものになるようにBPMを導入するということになります。そうすることによって業務フローや業務マニュアル(画面上の)は維持されることになります。(BPMS上の画面を使った「動く業務マニュアル」の例は次回、ご紹介します。)

ライセンスフリーのBPMS「Bonita」を使用して説明します。

システム管理者(プロセス管理者)が、セミナー開催プロセスが滞留していることに気が付きました。状況は以下のようでした。

Walterさんが4つも同時にパンフレットを作成しなくてはならない状況になっていました。
そこでシステム管理者(プロセス管理者)が2つのタスクを別の人にアサインし直しています。
Bonitaに限らず各BPMSには、このような機能を有しています。シンプルな例ですが、これがBPMSのC(チェック)の機能になります。
管理者や作業者がどこにいても、このような機能があれば誰がどのような仕事を、どれだけ抱えているかリアルタイムで見え、管理者はその負荷分散をさせたり、問題を抱えている場合は事前に察知することができるようになります。

3.まとめ

 今回のヒントは、業務の問題を察知し対処するというBPMのPDCAの「チェック」に関して説明をしました。この説明をすると管理者などは、「常にBPMSを使って監視するのか」といわれる人がいますが、そうではありません。BPMN図に「しきい値」をセットし何か異常があると知らせてくれるという機能を利用します。例えば「あるタスクの滞留が48時間以上になると、上司や同僚に知らせる。」を実現するために、以下のようにBPMN図を描いたとします。以下の例は「境界中間タイマーイベント(中断)」を使っています。そうすると、異常が発生している案件、実施している人の状態を見て問題に対応するということになります。

  • 申込人数の確認を忘れて「申込人数を確認する」タスクが起動してから48時間が経過すると
    サービスタスク(歯車アイコン) の「実施忘れメール」が本人、部長、企画担当に自動で送られます。

これはBPMSを導入しない限りできないことです。本人が助けてほしいという相談をし、自分の業務の状態を説明しない限り実現しないことです。それは問題が「見えない」からです。「忙しくても自分さえ頑張ればいいんだ」という思考の持ち主はオーバーワークになる危険性がありますがBPMSを導入していれば察知できます。また多くの人が「あるタスク」で滞留するのであれば、それはタスクそのものに問題がある可能性があり分析対象となり、次なる改善につながります。

 いつものように蛇足ですが・・・BPMの説明をすると「ウチの会社ではできない、難しい」と言われます。1万人以上の従業員を持つ会社でも、数十人の規模の会社でも言われます。セミナーでもそう言われる受講者がいらっしゃるのですが「『できない、難しい』で終わらせるのであれば、業務改善は実現しないです。」とお答えしています。「お金で買える改善は大した改善ではない。」と私は思います。これは製造現場の作業改善に関わってきた人には理解しやすい話だと思います。人の創意による改善は永遠であり、特に日本では、それを引き出す教育や環境を整えるのが経営者の仕事であったはずです。 地道な努力が必要で避けて通ることはできないです。経営者は自分の任期の間(すなわち短期間に)に結果を出そうとしますが、業務改善に一発逆転サヨナラホームランはありません。無いものを狙うがゆえに無駄なIT投資が繰り返されるのだと思います。

関連コラム

テレワーク、BPOにおけるBPM改善のヒント1
BPMと日本型経営システム
BPMとIT