BPMを実施したいと思った人は、社内に仲間を増やすことです。
一般社団法人BPMコンソーシアム 代表理事 山原雅人
可視化というと「業務フローを描く」という話になり、以下の3つの問題があります。
・描くことが目的となっている。(現状分析の域を出ていない。その後どうするのかという方法論が無い。)
→BPMにはプロセスマイニングツールは不要 参照
・To-Beフローを描いているつもり。(「作業の自動化」ができる部分を探しているだけ、業務の標準化ができていない)
→BPM導入が「いつの間にか普通のシステム開発」になる原因 BPMの「業務の標準化」を「共通化」と混同してませんか?参照
・おおよその業務の流れを記述しているレベルでしかなくBPMN図で本来描くべき領域まで描けていない。(参考資料レベルの業務フロー)
→一般的な業務フローとBPMN図との違い 参照
これを「可視化」と言っているのでは、過去にも何等かの形で実施していて、継続できなかった経験を持っている経営層や実務者層に訴えられるものはないでしょう。(ほとんどが、かなりの工数をかけて描いたものの1度使ったら終わりで放置されていると思います。)
BPMNは「ITからビジネス(実務者)への権限移譲」を目的として作られたことは、以前のコラムで書きました(BPMの「業務の標準化」を「共通化」と混同してませんか?参照)一方、日本型経営システムの優位性は実質的な権限移譲にあったということも書きました(BPMと日本型経営システム参照)。
しかし、現在では実質的な権限移譲をするための経営層と実務者層の「相互信頼」が失われており、経営層はSFAなどを導入して監視を強める(しかしながらSFAは利用されない)という動きに代わっていると思います。これを本来の日本型経営システムの長所を取り戻すためにBPMによって生み出される「透明性」と「権限移譲」ということを今回は書きたいと思います。

目次
1.かつてはなぜ、実質的な権限移譲ができていたのか
2.BPMが透明性を高め、上層部と実務者の関係を改善していく
3.まとめ
1.かつてはなぜ、実質的な権限移譲ができていたのか
「やらせてみて」→「結果を見る」「失敗しても」→「反省点から、どのようにやり直しするか」ということを上層部は観ていたと思います。
その繰り返しの結果、信頼できる人の意見、情報を重視し実質的な権限が委譲できていたのでしょう。これができていたのは長期の競争、長期雇用による知的熟練があったためでしょう。(BPMで非定型業務をスモールスタートで標準化する 参照)
これが崩れたのは、バブル崩壊後の「リストラ」という名目の「人減らし」にあったと思います。すなわち、現場からの情報で提案、提言をする人達がルーチンワークにはめ込まれ忙殺されてしまったためだと思います。
これとほぼ同時に、株主による経営者への評価が重視されるという動きが加速しました。そのことによって長期の視点が失われ「今を取り繕う」という
ことに経営者は走ってしまったと思います(リストラが繰り返される)。
そして、今は人材が育成されていない。育成される環境がない。意見や提案をする場がない。自分で会社をより良く変える機会がない。上からの指示は短期的な数値の達成が主であり、その他は現場の意見が反映されていない。などによって優秀な人材ほど会社から去っていく。という状態になっているかと思います。
だから昔に戻しましょう。ということではありません。
2.BPMが透明性を高め、上層部と実務者の関係を改善していく
かつてのように間接部門の人を増やすのではなく、それと同じ状態にするためにBPMを活用することです。すでに長期雇用による知的熟練という流れが止まっていますので(止まっていない企業もあると思います)、それを一朝一夕に回復することなどできないでしょう。かつての知的熟練は「属人化」とも言えました。そもそも上層部と実務者の相互信頼関係が壊れてしまっているので、疑心暗鬼になっている状態だと言えるでしょう。特に経営層は、下からの信頼できる情報がないため孤独になっていくでしょう。
上層部は監視を強めるためにKPIなどの数値目標を具体的に明示して、その数値が達成できているかどうかをウォッチする。実務者は、業務内容がどうであれ(例えば顧客との信頼関係を壊してでも)数値を達成できれば評価される。というような非常に短期的で単純な評価基準で企業が運営することに陥っていないでしょうか。形の上では長期的な目標や定性的な目標や評価も設定はされるものの、業務プロセスが見えない状態では、その評価は個人的な感覚や「あの人は良くやっている。頑張っている。」というような「うわさ」を頼るしかない。
疑心暗鬼に陥ることや、不確かな情報による判断に頼ることから脱却するためには業務プロセスを「透明化」することです。BPMはKPIなどの定量データだけでは知り得ない現場の情報が蓄積できるようになります。かつ、BPMは実務者自身が自身の業務を改善するために管理していることであり、SFAなどのように監視や半強制的な情報共有のためだけに作られたものではありません。実務者自身が効率的な業務を行っている、組織横断的なプロセスの改善を実現していることが見えることになります。組織を越えた変革を「誰が中心に行っているか」ということも見えるようになるでしょう。そのようなリーダーシップを発揮できる人材が評価され実質的な権限移譲が実現するでしょう。

3.まとめ
信頼できないから権限移譲ができない。権限移譲をしないから人材が育成されない。人材が育成される環境がないので人が去る。人が去ってしまうから外部の人材に助けを求める。外部の人材は短期間で内部の正しい情報を得ることができないので「間違った判断」を提案する。経営層は「間違った判断」を方針として打ち出す。実務者層は現場と乖離した経営方針に辟易とする。という悪循環を、この30年間繰り返して来ていませんか。
「任せる人がいない」のではなく「任せる人を育成して来なかった」ということでしょう。「見ようと思っても見えない」ということは「不安要素」になります。過去は、それを(今でいう)サービス残業も厭わない人材が見えるようにする(いろいろな意味での)「余裕」があった。これからはBPMによって「業務の透明性」を高めることでを実質的な権限移譲をし人材を育成していくということが必要になるでしょう。
関連ページ

